近年、所謂ブランドトマトは実に多種多様です。
僕自身それらのトマトにはすごく興味があって、新しい物を見つけては食べてみます。
毎年3月から5月くらいまでは、お店でフレッシュトマトをパスタにしてお出ししています。
このパスタの味付けは塩しかしないので、トマトの素材の味がストレートに表現されます。
すべての食材には敬意をもって吟味していますが、とりわけトマトにはいつも興味があります。
お店を初めて5年くらいは、トマトの選定に試行錯誤しました。
そんな頃に、あるお客様の紹介で北九州、若松のとある生産者の方を紹介して頂きました。
※現在においても生産が追い付いていないという事情もあり、生産者の方の名前は控えさせて頂きます。
この方が作られるトマトには僕の求めている要素を備えていました。
今の時代には、高糖度のトマトはいくらでも存在します。僕が求めているのはそれだけではありません。
糖度にも劣らない適正な酸度、トマトは野菜であるという証拠である風味と旨味。
この風味と旨味は、特に加熱した時に強く感じられるものです。
実際に畑や選別作業を見学させて頂くことになり、僕なりにいろいろ想像していました。
現代では農業もハイテク化が進み、センサーやコンピューターなどを多く取り入れる時代です。
ハウス内の徹底した温度、湿度管理。選別におけるセンサーの活用は当たり前です。
そんな事を考えていた僕は、実際見学させて頂いて肩透かしを食らいました。
特別な事は何もしていない、いたって普通な畑です。
選別場を見ても、ただ発泡スチロールの箱に入ったトマトがあるだけ。
色々お話しを聞いているうちに、この方はすべて感覚でこのトマトを作っているということを知りました。
ハウスの温度、適正な水やり、選別では見ただけでそのトマトがどのくらいの濃縮度なのかわかるそうです。
25年間トマトを作り続けてきた”勘”が体に染み付いているのでしょう。
若松地区では現在11名の方がこの若松トマトを作られているそうです。
身近にこんなに素晴らしいトマトが存在することに日々感謝しています。