料理やデザートを新しく考えるとき、古典的なレシピにインスピレーションを受けることが多くあります。
というかすべての発想の源はそうだと言っても過言ではありません。
何百年もの歴史の中で変わらず愛されるそれらのレシピは、時代が変われど普遍的な魅力を持っていると思っています。
カーディナルシュニッテンとはオーストリーの伝統的なお菓子です。
カトリックの象徴である黄色と白の縞をしたお菓子で、卵黄と卵白でそれが表現されています。
何百年前の時代ですから、現代ほど物質的に裕福な時代ではありません。
当時そのような貧しい環境の中でも、美味しいお菓子を作ろう。と考えた先人たちの努力が垣間見れます。
そんな時代だったでしょうからレシピ自体はすごく簡素です。
卵、砂糖、小麦粉、コーヒークリーム
これだけでも当時では贅沢だったのかもしれません。
縞模様に焼いたメレンゲとジェノワーズにコーヒークリームをサンドしたシンプルなお菓子ですが、これがとても美味しい。
このお菓子も現代になっていろいろとアレンジされていますが、起源であるこの組み合わせが一番美味しいと今でも僕は思っています。
生地とコーヒークリームをサンドして暫く時間がたつとクリームの水分が段々と生地に滲みて水っぽくなってしまいます。
お菓子屋さんのそれは仕方ないことです。ですがレストランだからこそできる表現があるのではないかと考えました。
極限までサクサクに仕上げた生地に、コーヒークリームをその場でサンドするというやり方です。
オーダーが入ってから仕上げるので、生地はサクサク、クリームがとろりという食感の表現ができます。
すごく食感の軽いお菓子ですので、食後のデザートにもぴったりです。
生地を極限までサクサクに仕上げるために、空気の乾燥した冬場にこれを提供しています。